ドッペルゲンガーの話・Ⅰ

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都会の高校はどうなのか知らないが、ど田舎にある俺達の高校に転校生が来るなんて結構珍しいことだ。だからこそ色々と噂してしまうのは仕方のないことだろう。 「実は俺、転校生について新情報を手に入れたぜ」 「へえー。どんな情報だよ?」 隼人はどうだとばかりに胸を張る。 隼人は噂好きだから、何かと色々な噂をどこからかよく持ってきていた。まあ、ほとんどが大した話でもないので、俺は今回も話半分に聞いている。すると、隼人はにやにやと笑った。 「ふふん。お前にとったら嬉しくない情報だろうなっ、いてっ!」 あまりに勿体ぶるので、イラッとした俺は隼人の腕を叩いた。隼人は腕をさすりながら俺を睨んできたが、無視だ。早く言わないほうが悪い。 口を不満気にとがらせて、隼人は話を続けた。 「俺達のクラスに来る転校生な、男らしいぞ」 「なんだ。野郎かよ」 俺は心の底からがっかりした。どうせやって来るなら可愛い女の子のほうが嬉しい。 こんな情報なら言われないほうがまだ楽しみがあって良かった。そう思って隼人に文句を言おうとしたら、どうやら隼人の話はまだ終わりじゃないらしい。 「しかもな、その転校生、かなりイケメンらしい」 隼人は俺を脅すように声を低くしてそんなことを告げた。だから、・・・。 「だから、どうした?」 「へっ?」 俺の答えは隼人にとって意外だったのか、隼人は間抜けな声を出した。
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