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「先日のお礼をさせてください」
電話でそう告げると、彼女は予想外だったらしく少し驚いているようだった。あれから一ヶ月以上も連絡していなかったのだから無理もない。もしかすると礼を失する悠人に失望していたのかもしれない。しかし、彼女の声はすぐに嬉しさのあふれた弾んだものに変わる。
『どんなお礼をしてくださるの?』
「希望があればお聞きしますが」
『そうね……あ、悠人さんとお食事がしたいわ』
彼女の希望が常識的なものだったことに安堵する。自分と食事をしてもたいして面白くはないだろうが、彼女が望むのであればそのくらいは付き合うつもりだ。
「食事や店について希望はありますか?」
『すべて悠人さんにおまかせします』
「わかりました」
そう答えたものの、どういう店を選べばいいのか悠人にはよくわからない。今まで女性を食事に連れて行くような機会はほとんどなかったのだ。お礼ということなので彼女に喜んでもらえなければ意味がない。気は進まないが、ドイツに転勤した親友の大地に助けを求めることにした。
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