第二章 思い通りにいかないのが世の中なんて思いたくないけど

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―中野亜紀。同学年同学科の知り合い。40人ほどの同学科の人間の中で、5人ほど居た女性陣のうちの一人だ(俺の学科は化学系で、女子が少ないのだ)。 背の高さは170弱、細身ですらっとした顔立ち。以前は髪の毛をポニーテールにしていていたが、今は髪の毛を下していた。長さは肩に届くくらい、緩やかなソバージュ。ほぼ黒髪だが、少しだけブラウンに染まっている。 化粧をしている分、学生時代よりも大人びては見えるが面影は変わらない。化粧と言っても派手に盛るようなものではなく、口紅とファンデーション程度のシンプルなものである。良い意味であまり年齢を重ねたことを感じさせなかった。 流石に昔ほどの肌の若々しさはなかったが、その分表情が柔らかくなっているように思えた。 少し長めの白のブラウスにネイビーの細めのパンツ。その上からふわっとした感じのライトブラウンのカーディガン。 足のラインは細く引き締まっていて学生の頃と変わらない。細身でシルバーのネックレスで囲まれた、ブラウスの胸元からちらりと見える健康的な肌。 大学時代はいつも小ざっぱりとした格好をしていた彼女だったが、こちらは随分と大人びたな、と健治は思う。機能的でありながら地味すぎず派手すぎずの、健治好みの服装だった。 ―こりゃまた、随分と綺麗になったなぁ。 ヒールのせいか健治と殆ど変らない身長になっている。顔を向けると、健治と亜紀の視線がほぼ真正面から向き合うことになった。瞳に視線が吸い込まれそうになる。慌てて少し目を逸らした。 「びっくりしたよ、こんな所で大沼君に会うとか思わないもん。」 そりゃそうだ、と健治は心の中で同意して苦笑した。全く、とんでもない偶然だぜ。 街中で俺を探すなんてメタル・スライム並み(いや、もっとか?)の確率だ。滅多に外出しないうえに活動範囲だって全然違う。普通に考えたらあり得ない位の確率だ。 仮に俺が彼女を先に発見したらどうしただろう。ひょっとしたら自分からは声をかけず、何事もなかったようにやり過ごすんじゃないだろうか。 そんな事を考えている。健治自身も、こうして亜紀と話しているのが不思議に思えた。だから同意の言葉を返す。
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