第二章 思い通りにいかないのが世の中なんて思いたくないけど

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「俺もびっくりしたよ。こんな沢山の人の中で、良く俺に気付いたね。」 ―運命? ふと頭にそんな言葉が浮かんで、健治は自分で吹き出しそうになった。何だ、お前は安っぽいラブストーリーでも期待しているのか。 男女の偶然の再開。そんなシチュエーションに対して反射的に思い浮かんだのは、映画やドラマで良くある「再会をきっかけに男女が恋に落ちる」というもの。 俺も随分と俗物だな、と健治は心の中で自嘲する。 別に彼女に対して恋心を抱いていたなんてことはない。まず大学時代でさえそれほど接点がなかった。研究室も違うし、同じサークル活動をやっていた訳でもない。精々同期の間で飲み会をやった程度だ。 共通の話題もない。身長も釣り合わない(健治は「男の方が背が高くないと格好がつかないだろう」と思っている)。ないない尽くしだ。 大体自分と彼女じゃ性格も正反対だ。俺が内に籠るタイプだとして、彼女はどんどん外に出ていくタイプだ。 彼女と恋愛なんてしたら、彼方此方に連れまわされ、彼女の沢山の知り合いと引き合わされ、自分の興味もない様々なことに巻き込まれるんだろう。 ―おお、怖い。 健治は思った。彼女はゲームなんてほとんどしないんじゃなかろうか。それどころか、ゲームなんてものに理解を示さないんじゃないだろうか。 彼女と付き合いなんてしたら、今までみたいにゲームをすることもできず、下手をしたら生活スタイルを全面的に矯正されてしまうかもしれないのだ。そんな風に束縛されるのはまっぴらごめんだった。
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