1.半月程前

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そろそろ二人で大丈夫かしら 妻がお茶のおかわりを問うような調子で言った。 話の緒をつかみ損ねて僕は言葉を返さない。 「来月、半日ほど出掛けたいの。雪子をみててもらえる?」 雪子は三歳になった。 赤ん坊の頃は泣かれると困ったけれど、最近は外食時にも手がかからないし、お気に入りの映画のDVDもある。 半日程度なら問題ない。 「結婚式なの」 「へえ、誰が」 「昔の知り合いよ。招待は断ったんだけど、チャペルの外でも撮影するらしいから、ウエディングドレス姿だけでも見ようかなって思って」 ドレス姿と言う言葉に安堵していた。 「半日でってきつくないか。ゆっくりしてきたら。」 「いいの。そんなに仲が良かったわけでもないから。」 妻はそう言ってカレンダーに○印を付けた。 赤のマジックで。 そのぶっきらぼうな付け方は普段の様子とは違い、友の結婚を祝福しているとも思えなかった。 その違和感は、いまだに覚えている。
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