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そろそろ二人で大丈夫かしら
妻がお茶のおかわりを問うような調子で言った。
話の緒をつかみ損ねて僕は言葉を返さない。
「来月、半日ほど出掛けたいの。雪子をみててもらえる?」
雪子は三歳になった。
赤ん坊の頃は泣かれると困ったけれど、最近は外食時にも手がかからないし、お気に入りの映画のDVDもある。
半日程度なら問題ない。
「結婚式なの」
「へえ、誰が」
「昔の知り合いよ。招待は断ったんだけど、チャペルの外でも撮影するらしいから、ウエディングドレス姿だけでも見ようかなって思って」
ドレス姿と言う言葉に安堵していた。
「半日でってきつくないか。ゆっくりしてきたら。」
「いいの。そんなに仲が良かったわけでもないから。」
妻はそう言ってカレンダーに○印を付けた。
赤のマジックで。
そのぶっきらぼうな付け方は普段の様子とは違い、友の結婚を祝福しているとも思えなかった。
その違和感は、いまだに覚えている。
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