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俯いているので顎の少し下でカールした髪が横顔を隠している。
首筋が出ていて、こんなワンピース持ってなかったな、と思う。
襟のないデザインで、多分隣から見下ろした覚えがあれば、
キスしてる。
「パパ!」
足元で葉っぱを拾っていた雪子が走ってきた。
学生達が視線を隠さないのは学内で子供が珍しいだけかと思っていた。
それでも後日、
高嶋先生って奥さんにデレデレですね
とからかわれたので自分の態度も普段と違っていたんだろう。
僕の姿をみて、ほっとしたように破顔した妻があまりにも可愛かったので
見とれていた。
目線をそらしたら、妻の耳に揺れる真珠がひかり、大きすぎない強すぎないそれが咲子に全くよく似合う、とぼんやり思ったんだった。
フォーマルな印象だったけれど、家で見るとカジュアルなスーツのワンピースと何度か見たアンサンブルのカーディガンだった。
2組のセットの片方だけを使っているのだが、服に疎い自分にはもともとこの組み合わせで売っていても正解だと思う。
咲子が着ると高価に見える。
周囲の喧騒が消える。
『高嶋先生の奥さんって派手じゃないけど本当に綺麗ですよね』
そう言ってくれた女子生徒がいた。
そう、僕の妻は本当に綺麗な人なんだ。
空き缶を捨てる音まで、心弾む。
もったいないくらい幸せだ。
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