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ドアの隙間から光が漏れる。
それを見ながら鍵を刺し幅が広くなった光の中に身をくぐらす。
何故だろう、昔からの癖だ。
帰ってくると振り返らずに後ろ手で閉めたい。特に夜は。
早くドアを閉めたくて、コートの裾を挟んだことがあるので以来気をつけているけれど。
「おかえりなさい」
咲子はパジャマにパーカーを羽織っている。通販で僕に買ってくれたのだけれど、細身で少しきつかったので咲子が着ている。
「ただいま、雪子はもう寝たの」
「眠そうだったから、早めにお風呂入れたの。さっき寝たわ」
「そっか、残念だな」
ドーナツの箱を見せる。
「たくさんね。明日……」
「大丈夫、DVDも借りてきた。安心して行ってきなよ。久しぶりにゆっくりするといい」
部屋着に着替えながら言った。
「明日、私も食べようっと」
咲子はドーナツを見ていた。
「なにこれ多すぎるよ」
やけに明るく、どれにしようかと。
楽しそうだった。
表情は見えなかった。
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