母と子

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家から10分ほど、大通りから外れた路上裏にその店はある。灰色の建物の一階、看板には「freedom」と書いている。 以前マスターに聞いた話なのだが、この店には芸能人やミュージシャンなんかも来るらしい。 人に見られる仕事だったり、安らげる場所がない人の為に”ここでは何も縛られずに自由でいてほしい”そんな意味で名前を付けたそうだ。 [ガチャ…] 静かにドアを開ける。中からジャズが聞こえてくる。 カウンターの方へ目をやるとタキシード姿のいわゆる”叔父様”がいる。 「こんばんは。マスターお久しぶりです。」 母が帰国するたびに私をこの店に連れて来るのでマスターとは顔馴染みである。 「お久しぶり。帰って来たよ。」 間を空けず母はそう言う。 「 おっ!!はるちゃんにけんちゃんじゃないか。お久しぶり。相変わらず突然来るね。」 マスターにあまり驚いた様子はなく慣れた手付きでカクテルを作り始めた。 「今回はどこに行ってたの?」 マスターがそう聞くと 「イタリア アメリカ そして今度はイギリスですわ。」 母はそう返した。 「相変わらず色んなとこを飛ぶね…。体大丈夫なの?」 すかさず私がそう聞いた。 「大丈夫よ。ちゃんとケアはしてるわ。息子に心配されるほど柔くないわ。」 そう言って胸を叩く。 「お待たせしました。」 そう言ってマスターがカクテルを置いてくれた。
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