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……それにしても。 頭が痛む。 ずきずき、ずきずきとした痛みの向こうに、 なにか大事なことを忘れている気がするのは何故だろう。   痛みに耐えてベンチに座っている俺に、 目を向ける人など一人もいない。 たまに呻き声を漏らしても、誰一人俺を見ない。 誰も、誰も、誰も、俺に気付かない。 まるで俺は、――そこにいないかのように。   五時を告げる音楽が鳴り出し、ベンチから腰を上げた。 ふらつく足で家路につく。 玄関のドアを開けると……妻と、目が合った。
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