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あたしの感情が無意味な方向に傾いたのは 間違いなくアニという位置につけている、このヒトの所為だ 「華、お前、首ンとこ、」 髪をキュッと掴まれて そのご指摘の場所が露になるように 傾けさせられた。 「……キスマーク?」 見下ろした 冷たくて、だけど温かい真っ黒の瞳 「うん」 口の周りの滴りを拭い取って 暫く、アニを見上げる。 「ふーん、華さ」 「うん」 「あんまり、自分を粗末にすんなよ」 そんな事を義兄が真剣に言うもんだから ちょっと笑っちゃう 「志伸(シノブ)さんが、そんな事、言うんだ……」 「可笑しい? イモウトを気遣ってやってんだろ?」 あたし達家族は 少し微妙な位置関係で。
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