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‘今日、泳ぎに行くけど?’ そう飛ばしてきたのは海治。 泳ぎに、か。 そう言えば、最近怠けていた事を思い出して 二つ返事で、折り返した。 直ぐに既読の文字が刻まれて ‘じゃあ、後で’ 応答も早く。 こっちのチグハグな会話とは エライ違いだと思いながら スマホを鞄にしまった。 その後も 何を話すでもなく、二人並んで ボーッとして タイムリミットの10分前にあたしは席を立つ。 「センセー、さようなら」 売られた喧嘩をちゃんと 買った印に、また、この 何でも虜にしてしまうであろう オトコの瞳を見つめながら 精一杯の微笑みを浮かべて。 三神センセーは、何も言わずに 瞼だけを一度、ゆっくりと閉じて あたしを見送った。
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