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闇の車は 相変わらずの位置に停められ 彼の数学的な拘りなのか 本当に、三日共にピタリと同じ位置に填まり込んでいるよう。 気になる獣は 既に新しいモノに変わっていて 今あたしが持つ獣とは、どことなく違う。 やっぱりこれが特注品というのは 本当らしい、と改めて思った。 荷物はトランクに入れられ ご丁寧に助手席のドアまで開けてもらい あたしは、シートに沈む。 この期に及んで 本当に、一億に対抗出来る術は無いのか、と未だに考えている自分が、情けなくなった。 移動中は終始無言で この、重く、黒い空気から解放されたい そう願って一時間弱 車は地下の駐車場に滑り込む。 都心にあるわりに 緑が多く、閑静な場所に佇むマンション。 ……大学までは遠くなっちゃったな。 「降りて」 とにかく波風立てずに大人しく過ごそう 心にそう決めて 言われるままに、車から降りた。 部屋は高層階で やっぱり無言のエレベーターが灯した数字は23。 眺望が期待出来そうなところが一つの気晴らしになれば、と思う事にする。 ガチャリ、と重厚な音を立てて開いたドアの先からマスター三神の香りが漂う。 スパイシーな甘い香り。 促されて先に入ったそこは フットライトが点いて、来客を歓迎している。
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