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「結納が終わったら、日をみて、
先に籍をいれるつもりだ」
「うん」
元々、あまり食欲のなかったあたしは
すっかりそれを無くして
お箸をテーブルに置く。
「おめでとう、おにいちゃん」
志伸さんのお膳は順調に食が進んでいて
もう、ほぼ完食の状態だった。
「ありがとう、華」
凄くおめでたい話なのに
何でか、笑顔が出せない。
微笑んで、お祝いしてあげたいのに
あたしは笑ってればソレだけで
いいんだって
よく言われたのに。
「華、ホントにそう思ってる?」
三神センセーよりも幾分か柔らかい黒い瞳があたしを捉えて尋ねたのは
どういう意味があるのか。
「え?」
「オレが結婚するのを心から祝えるのか」
心から、って。
もちろん。
もちろん?
「うん、もちろん」
「そうか」
お膳に再度落とされた視線。
「オレは」
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