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「お前がもし結婚するとなったら
……祝えそうに、ナイな」
……くるしい。
喉のカタマリも
胸がつかえてるのも
胃の中に横たわるドロドロも
全て未消化で栄養になんかならない。
静かに
静かに食しながら
「今でさえ、穏やかでいられない」
空気を震わせるバリトンは
とても独特な雰囲気を主張していて
冷たく落ち着いた、アツい熱に
気圧されてしまう。
「おにいちゃん」
「その呼び方も、気に食わない」
お味噌汁までをきれいに平らげ
やっと箸を置いた志伸さんは
その、冷たくて、でも温かい眼差しを
あたしに向け、口元だけを緩ませた。
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