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「世間から不埒(フラチ)極まる行為だと罵られても、それは表面上の事で お前とオレの関係に疚しいところなんて 何ひとつなかった」 倉皇(ソウコウ)する事の無い志伸さんの瞳 「背徳だ、と刻印づけをする事でお前を縛り付けていた」 何故 こんな事を言うのか。 「華」 テーブルの下 太ももの上で握った掌は汗まみれで。 「ずっと傷つけてきて、ごめんな」 ドン と、心臓が膨らんだのと ガン と、頭を殴られたかのようなショックが 一気に身体を貫いた。 傷、つけた? 「あの時から、……オレの気持ちは 何一つ変わってない」 志伸さんは 真っ直ぐにあたしを見る事が出来るヒトだった。 あたしは、あの頃急に男と女の関係になった 義兄から目を逸らす事が多くて。 関係を受け入れるようになったのも 半ば諦めで だけど彼の与える施しに どんどん逆らえなくなる自分に 後ろめたさがつきまとった。 志伸さんが刷り込み続けた 背徳と、非道徳と 人倫に悖(モト)る行為だと、 そうやってずっと傷つけてきた、と? 違う。 違うんだ、志伸さん。
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