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「あたし、傷ついてなんか、ない」
「華」
フルフルと首を振りながら
やけに優しい顔をした志伸さんを見上げた。
「最初の頃はそうかもしれなかったけど」
「華、もういい」
「だから、おにいちゃん、謝らないで」
瞼をキュッと閉じた志伸さん。
おにいちゃん、と呼んだ事なんてそうそう無かった。
志伸さん、と呼ぶ事の方が楽だった。
おにいちゃん、と呼ぶと罪悪感が
途方もなく襲い掛かってきて
壊されそうになった。
そして、いつしか
壊される事に愉しみを見出だして、
志伸さんに身体を占拠されたんだ。
「行くか、華」
志伸さんが伝票を掴んだ。
「……うん」
他の女性と結婚するオトコに
愛を語られた。
しかもそれは
血の繋がりも、戸籍の繋がりもない筈のアニ
あたしの想いはとても複雑。
席を立ち靴を履く。
奥の席から立ち上がった志伸さんが
あたしの横に座った。
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