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そこまでたった、5メートルもない距離に 少しずつ、震え出す一歩、一歩に 今日起きた事全てを早送りで見せられて やっと三神センセーの前に立ち 口にしたのは 「ありがと、三神センセー……」 なんて事のない、感謝。 小さな音は聞き取れなかったかもしれない。 悲しくて 申し訳なくて そして、辛くて こんな勝手な自分の狡さを 流れ出した涙を鼻水を 止める事は出来なくて 彼にまた、縋り付く。 前回同様に、自分の仕業だと言い あたしの身体の事情も何もかも含めて配慮し そして、ここに連れてくる途中に見せた 自分の感情を押し殺した三神センセー。 あたしの記憶が間違いでなければ こんな風に過呼吸手前になるくらいにまで泣いたのは きっと、身体が大人の経験をしてから 一度だって、無い。 ここが何処かなんて 忘れるくらい、ずっとずっと泣き続けた。 ……すき、と思う事は許されてはいないけれど そう、思ってもいいだろうか。 なにが、すき どこが、すき だれが、すき だけど、今日だけは甘えてもいいだろうか。 吉川先生の言葉を都合のいいように理解して それをうまく、狡く、利用して 手を引かれ車に乗せてもらい そして、また、手を引かれ部屋に連れられる 入れ込んでる、というその強みを最大限に 利用しよう。
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