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マンションに帰りつき
もうずっとどうにかなりそうな妬心と劣情を
身に纏ったオレは
自身を清める為に
水を浴びる
何分か何十分か冷たい水に打たれて
すっかり身体の表面がそれと同じくらいになった頃
やっとバスルームを出た
風が
部屋を通り抜けていく
それが冷えた身体を毛羽立たせた
灯りの無いリビングの奥の窓が開いていて
ベランダに出ていた華の
黒い髪がユラユラと靡いているのを
それがそのまま華を掴んで引っ張ってゆきそうな程に見え
慌てて、ソコまで駆け寄ったオレ
「……センセ?」
細い腕を後ろから取り
それが、突然の事だったにも関わらず
驚くほど冷静な華
かえってオレの方が動揺しているのが目に見えて明らか
「三神センセー、冷たいですね」
その
綻んだ顔を
オレだけのモノにしたい
そう、思うのは
円周率をずっと解き続ける事くらい
難儀なものか
「じゃあ、華があっためて」
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