23

5/28
前へ
/39ページ
次へ
手首に巻き付けられたまんまのネクタイを解き それを、忌々しそうに見て ベッドの脇にスルリと落とした。 蛇の脱け殻のように 不規則な螺旋を描いたタイを 冷めた瞳で見据え 三神センセーは信じられない程の強さで あたしを抱き締めた。 「……苦しかったら、言って」 胸が圧迫されて 空気がうまく通わない だけど、三神センセーの声を聞く耳だけはちゃんと機能していて 苦しそうなのは、三神センセーの方だと そう、思った。 抱き締めるその強さは いっこうに緩む事はなく 彼が今、何を考え、何を想い、こうしているのかが やっぱり気になった。 狡いあたしはまた、この人に縋る 腕をスルスルと上げ 背中に回した腕に 彼には敵わないにしろ、出来るだけギュッと力を籠める 「華」 囁かれた音は優しく、息吹きが耳を擽る。 三神センセーのこんな姿を見たのは、二度目。 あたしは、掠れる音で返事を返す。 「はい」 「立てるか」 やっと呼吸が楽に出来るくらいに 解かれた腕の中で頷いて、三神センセーの顔を見上げた。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1668人が本棚に入れています
本棚に追加