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厳しさが溢れる直黒の瞳は 外からの光しか届いていない部屋の中で 最も濃い、黒に見えた。 黄金比は 険しさを携えていても、見目麗しく 見るものを、虜にする。 「シャワー、してきなさい」 前髪を払い 涙を掬い 唇に寄る視線。 「傷、酷いな」 三神センセーの右手が、親指が ゆっくりとソコに触れ どれだけ腫れているかを初めて知った。 「痛い?」 「痛く、ナイ」 嘘、イタイ イタクナイ訳がない。 イタイけど もっとイタイところがあった。 三神センセーが あたしを労る訳が分からない。 自分の所有したモノが起こした不始末は ちゃんと責任を取らなきゃならないから? いちばん濃く、激しい黒から 離れられなかった。 そんな惨めなあたしに 優しく唇を合わせようとして。 ソレが、柔らかく触れた途端 ‘ケガレテイル’ そんな事態が起こっていた為に 沸き上がった感情から、反射的に離そうと拒もうとして 身体を捩った。
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