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何処に行くか、なんて知ってる 帰り道からそれているのに気付いて ああ、そうか。 そう、思った。 一度ならず、二度までも…… 車の中の空気はいつもと変わらず重々しくて 無言の重圧が今日は、凄まじい。 それも、そのはず また行かなきゃいけないんだから。 「三神センセー」 「どうした?」 「どこ、行くんですか」 少しだけ間が開いて答えたのは、溜め息まじりに吐かれて 「病院」 「……ですよ、ね」 「ああ」 そして、次の瞬間 『キキッ』 凄い音を立てた闇色の車が 夜の闇を切り裂いて停まった。 少し開いていた窓から入ってくる 何かが焦げたような臭いが鼻につく。 ゴム……が焼けた匂いだ。 イヤな、ツンとした化学的なソレ。 クラクションを鳴らしながら 通り過ぎた二台の車。 左側の視界に映るのは ハンドルに顔を埋めた 三神センセー。 ごめんなさい、三神センセー ごめんなさい、三神センセ 謝って済む事じゃ、ナイ。 何事もなかったかのように、また車を走らせた 三神センセーは、ポツリと呟いた。 「……悪ぃ」 今まで聞いたどの音よりも寂しく感じたそれは あたしに深く、響いた。
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