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……これで、志伸さんの置いていったものは 全て、無くなる 何処かで安心する自分を 腹立たしく感じた。 やっぱり、狡いのは志伸さんじゃなくて、 あたしだ。 「咲良さん、約束 こんな薬は二度と飲まない」 山下先生は細くて長い、綺麗な小指をあたしの前に掲げて。 「……はい」 「よし」 結ばれた小指は 山下先生の思いの外強い力で 「じゃあ、向こうの診察室に移動してください 上野さーん」 にこり、と微笑んで あたしに別れを告げた、ハキハキした女医先生は その場を来た時同様に、パタパタと忙しなく駆けていった。 そして、診察室まで辿り着いたあたしを待っていた二人。 はい、すいません 的な、三神センセーの声が聞こえたような そうでないような…… いずれにせよ、また、謝ってるんだ と、思うと 物凄く胸が痛くなった。 どんどん沸いてくる今までに、ない気持ち。 三神センセーとすぐ目が合って 彼の険しさを麗しい程の黄金比が際立たせている。 スイと立ち上がった三神センセー。 「吉川先生、終わりました」 「あー、キミが、サクラ ハナさんね」 「はい」 「へー、ひょっとして、このオッサンの外見に騙されてんの?」 「は?」 この間の大森先生とは違うドクターが あたしになんとなく意味深な笑顔を見せながら 不可解な事を、不躾な程の勢いで尋ねた。
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