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三神センセーは あたしを椅子にかけるように促し 遠慮なくそこに収まる。 「薬、飲んできた?」 「はい」 短いやり取りが ドクターとナースの間でなされ こちらに向き直ったドクターが あたしに、忠告したのは 以前大森先生から受けたモノとほとんど変わらずで。 ネームプレートにヨシカワ、と書かれたドクター 吉川先生は次いで、あたしの後ろに立つ 三神センセーにも、忠告を飛ばす。 「そして、そこのオッサンも こんな可愛い子になんて事してんだ、バーカ お前、なんだっけ、数学のあの受賞したヤツ、返還した方がいーよ」 スッゴい、吐き捨てるような言い方で 三神センセーを蔑んだ後、あたしに同意を求め 急に真顔に戻った途端に、あたしだけに話があると言った吉川先生。 そして その目の色が急激に変化するのを 見た。 「奏、マジで二度と来んなよ」 あたしの後ろを見上げたその表情 厳かで、かつ、諭すようなそれは 三神センセーとはまた違った流麗な姿。 ああ、とだけ返した三神センセーを 振り返ると 「すぐソコで待ってるから」 そう言って、今までにない優しい笑みを落とし 診察室を出ていった。
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