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「薬、飲んできた?」 「はい」 吉川が看護師に尋ねている 「咲良さん、この前大森から聞いたと思うけど 出来ればこんな薬は飲まないようにするのが一番なんだ 副作用が少ない、といっても身体には急激に変化をもたらすモンだからね」 「はい」 「嫌だったら、嫌だ、っていう ちゃんとした態度を示す事も必要」 「はい」 素直に頷く華の声は もう掠れてはいなかった 華に向いていた顔をオレに向けた吉川は 「そして、そこのオッサンも こんな可愛い子になんて事してんだ、バーカ お前、なんだっけ、数学のあの受賞したヤツ、返還した方がいーよ」 ねー、と、華に首を傾げて同意を求める オイ、お前はなんて事を言うんだ 「さて、それではちょっとだけ咲良さんにお話があります、オッサンは先に出て下さい」 吉川はオレに向かって手で払う仕草をして 「奏、マジで二度と来んなよ」 眼力が、医師として人間としての 倫理と正義をものがたり オレに圧力をかけてくる 「ああ」 と、だけ頷いた 先に出て行くオレを 狼狽の色を灯しながら見る華に 「すぐソコで待ってるから」 そう伝えて、微笑んで 華がソレを見てコクリと首を縦に振ったのを見届けてから オレは外に出た
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