22

8/11
前へ
/39ページ
次へ
普段、感取(カンシュ)した事のない 明らかな煩(ワズラ)いが 今ではオレの闇色でさえ呑み込んで 右も左も分からなくなってしまった ただの黒 なんの力も持たない、ただの黒 そんな喪心(ソウシン)を促すくらいの出来事だった、らしい アニ、という位置付けにいて イモウト、という存在を隅から隅まで正に文字通り、限りなく知り尽くし そしてオレよりもはるかに大量に自分を植え付けて 結婚相手がありながらも、尚もイモウトを侵食し続ける 嫉(ソネ)ましい存在 「ありがとうございました」 すぐ斜め前の扉が開いて 華が出てくる 伏せた瞼 しっかりとした黒い睫毛をパッと持ち上げて その奥の瞳がオレ捉える 過信ではないだろう 安堵と緩和を覚えたその瞬間の顔色 忙しない夜間救急の雑音が 華とオレには届かなくなった
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1668人が本棚に入れています
本棚に追加