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こちらに歩き出した華 壁に預けたオレの背中がソコから離れたと同時に 目の前に立ち 「ありがと、三神センセー……」 透き通った小さな声で呟いた その響きはオレの胸元に吸い込まれるように消えていく 鼻をすすった音を皮切りに 華は 同じくらい小さな声を上げ 肩を揺らし、泣きじゃくった 彼女の情緒が揺れている オレよりも弱く脆い 今にも崩れてしまいそうな華を抱き その波が収まるまで大事に包む 流れ込んでくる華の切なさと 自分の小胆さに オレは唇を噛んだ 彼女の身体は温かく 彼女の匂いは芳しく 彼女の震えは愛しく そして 彼女の全てを盲愛する
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