1668人が本棚に入れています
本棚に追加
こちらに歩き出した華
壁に預けたオレの背中がソコから離れたと同時に
目の前に立ち
「ありがと、三神センセー……」
透き通った小さな声で呟いた
その響きはオレの胸元に吸い込まれるように消えていく
鼻をすすった音を皮切りに
華は
同じくらい小さな声を上げ
肩を揺らし、泣きじゃくった
彼女の情緒が揺れている
オレよりも弱く脆い
今にも崩れてしまいそうな華を抱き
その波が収まるまで大事に包む
流れ込んでくる華の切なさと
自分の小胆さに
オレは唇を噛んだ
彼女の身体は温かく
彼女の匂いは芳しく
彼女の震えは愛しく
そして
彼女の全てを盲愛する
最初のコメントを投稿しよう!