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「佳奈子ちゃんも、無理強いはよくない」 キッパリと制した義兄さんは やっぱり統率に向いている 「じゃぁ、義兄さん、お先に失礼します」 姉貴の心配を孕んだ目が こっちを串刺しにしていた 「姉貴、大丈夫だから」 「奏……」 「もう昔の事に情熱を燃やすほど、若くねぇよ」 オレは片手をヒラヒラさせながら席を離れた 店を出て、エレベーター前でスマホを取り出す 華からのメール 「は?」 バイト? 「何やってんだ、アイツ」 ナチュラルに口をついて出たセリフ 「ああ、もう帰ったのか……」 次のメールを見て溜め息を吐いた 「へー、カナデ、メールで一喜一憂するんだ」 いつの間にか立っていた佳奈子 かけられた声に多少驚いたのは事実 「するよ」 エレベーターの位置を示す数字が 18に近づいてくる 「お前にはしない」 扉が開いて、そこに乗り込む前に見た佳奈子の顔は 「華にだけ」 やっぱり、美香に似ていて 美香に別れを告げた日の彼女そのものに見えた
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