1568人が本棚に入れています
本棚に追加
暫くして
部屋に戻ると
「あ」
寝てる……
志伸さんがベッドに凭れながら
アルバムを抱えて寝息をたてていた。
きっと
疲れてるんだろう。
アルコールも久しぶりに摂取しただろうし、
あたしといるのだって、神経使うはず。
電気をそっと消して
ベッドの上のタオルケットをかけようとして、手を止めた。
スースーと心地よく眠るその姿に
どうしても聞きたくても聞けない事を問いかける。
意識のある時には絶対聞けなくて
「志伸さん、あたしの事忘れたかった?
あの事故はあたしの所為?」
勿論、返事なんかあるはずがない。
小さな声。
ひょっとすると、声でもないのかもしれないくらいの、囁き。
「……ごめんね」
膝の上のアルバムを避けて
タオルケットを被せる。
‘パシッ’
離れようとしたあたしの
右手首が捕らわれた、乾いた音。
ハラリ、と、滑り落ちたタオルケット。
最初のコメントを投稿しよう!