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シンと静まった空気の中に 目を閉じたままの、志伸さんとの距離が近くて。 一瞬、何が起こったのか気付かない。 あの、 な、に、おにいちゃん…… 声に出したつもりでも それも、音にはならなかった。 背中に回される右手と 腰に回される左手 いやいや、待とうよおにいちゃん いやいや、逃げようよあたし 引き寄せられた身体は 志伸さんに軽くアタックをして、落ち着く。 今さらだけど ちょっとの抵抗を試みて ………… そんな上っ面なものが、敵う訳もなく。 身体が斜めに傾いていくのも どうすることも出来ない。 ……どうにか出来るだろうに どうにもしないのは、なんでだ。 ベッドの下の絨毯の上で 抱き締められたまま、動けず 動かず 狡い、あたし。 こうなったのを おにいちゃん の、所為にして あたしも、瞼を落とした。
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