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「なに、話って」
その日
オレは珍しく、直接電話をかけてきた親父と
会っていた
「お前はいつも、前置きがないヤツだな」
「前置きなんかいらないだろ」
「まぁ、慌てるな」
「これでも結構忙しいんだよ、オレ」
「そうか」
昔から、何かがあれば親父と来ていたこの店も
至極ご無沙汰で
まぁ、親父の方は未だによく来ているみたいだが
バーテンダーがグラスに入った
アルコールを
スイ、と目の前に出して
軽い一礼を見せ、そこを離れた
「お前、結婚する気はあるのか」
前置きはなくていい、と言ったのは自分の癖に
「……相手にもよる」
「新明のとこのお嬢ちゃん」
こんな話をいきなりされると
あんまりイイもんじゃない
「しねぇよ」
「新明が正式に縁談を申し込んで来た」
「は?」
「新明が半導体で伸ばしてきててな、今じゃ国内では
トップシェアだ
老舗の電機企業を差し押さえてな」
「……」
「まぁ、うちもそろそろもっとエコを組み込んでいきたい
ちょうどいい機会だと思うんだがな」
「だから、佳奈子と結婚しろ、か」
「まぁ、話が進めばそうなるだろう
別に構わんだろう?相手が姉から妹に変わっただけだ」
オレは親父を一瞥する
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