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「断る」
「佳奈子ちゃん、お前と結婚したいらしいぞ?
会ったんだろ?」
「……」
「なんだ、学生に入れ込んでいるってのは
本当の話か」
「……」
「女は若い方がいいだろうが、それはそれ、として
うまくやれ」
「親父と一緒にしないでくれ」
グラスの中のアルコールが
溶けた氷に混ざる様が、その中で紋様を作る
じわり、じわりと周囲をぼやかしながら
「結婚はしない」
「まぁ急(せ)いて決めるな」
「ゆっくり考えるまでもない」
「嫌か」
「無理だ」
「……珍しいな、奏
そんなに若い方がいいのか」
再び親父に一瞥をくれて
「そうだ」
言い切った途端、声をあげて笑い出した親父は
どう考えてもこのバーの空気には相応しくなかった
「へぇ」
興味など無いくせに
意味深な笑みを浮かべた親父
歳の割には若々しく見られるミカミグループの社長は
この背格好を大いに利用してきた男だった
やり手で狡猾
融通を効かせるフリをして
結局は自分が優位に立つように
事の運びを上手く、操る
今回の事も、きっと、ソウナルように
企んでくるに違いない
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