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「海治」 「うん、悩み事?」 「うーん、どうだろ」 ニコリと笑った海治の笑顔は 横向きからでも、素敵で。 「……おにいちゃん、絡み?」 「……」 「あー、心配しないで?つけこんだりしないよ」 また、笑った。 「そんな心配、してない」 「……咲良、出ようか」 「海治、ゼミだよね」 「咲良、なんで泣く?」 「泣いてない」 海治の掌が、あたしが泣いているという ソレを拭う 「咲良、幸せなんじゃ、ないの?」 「……」 「幸せになる、って言うから……」 海治はそこで、口を噤んだ。 ガバッと身体を起こしあたしの手を取った海治は 「いくぞ、咲良」 言うが早いか荷物ごとあたしを拐い 講堂を飛び出した。 「か、かい、じっ」 「なに?」 「彼女に、わるいっ」 こんな、如何にも何かありました、みたいな勢いで 手を引かれて 目立つ事この上ない。 「あー、やっぱ付き合えない、って断った」 「……えっ?」 「だから、心配しないで着いてこい」 「海治……」 「話、聞いてやるから たまには、誰かに相談してみろ」 握られた腕が、思いの外温かくて 熱いくらいだった。 「楽にならなくても、スッキリする事くらいあるだろ」 歩くスピードがいつもよりも早くて だから、溢れる涙に気付かないでいたのかも
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