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振り返ったそこで見た 記憶の中に鮮明に残っていた人。 なんせ、つい一昨日くらいに見かけたばかり。 「咲良 華さんね」 グロスで艶々と輝く唇は 女性の象徴のようで どこかエロチックに見えた。 綺麗な人 こう思うのは二度目だ。 「初めまして、新明 佳奈子といいます」 「……何か、ご用でしょうか」 きっと 三神センセーが関係してる、っていうのは 容易に想像がついた。 大人の笑顔、っていうんだろうか 正に、その落ち着いた表情から溢れる ホロホロと解けそうな笑みで 「三神 奏の事で少しだけお話をしたいのですが お時間のご都合は如何でしょうか」 あたしに視線を向けて、次いで海治にそれを向ける。 「そちらの方はボーイフレンド? わたくしの方は、お二人ご一緒でも構いません」 「……わかりました」 そう、返事をしてからあたしは海治に聞いた。 「海治、先に行って待ってて?」 海治は言いたい事を口に出さずに 唇を結んだまま、頷いた。 そのままそこで海治を見送る。 「ハンサムな彼ね、お似合いだわ」 あたしは向き直り、新明 佳奈子さんに伝える。 「お話とはなんでしょうか」 「……分かっていらっしゃると思ったけど」 ここでは人目をひいてしまうし かといってお店では、ちょっと、出来ない内容なの そう言って 新明さんとあたしは 彼女の車の後部座席に並んで座っていた。
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