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「三神と一緒に住んでいらっしゃるわよね?」 何も言わずに黙っていると 「あぁ、心配なさらないで 三神から、聞いています」 「……」 三神から、聞いてる? センセーから? 「ご免なさいね、貴女のご事情も、お兄様の事も 存じ上げてます」 ……なに、この人。 「わたくし、三神とは婚約をしています 貴女は、三神の家がどういうところか…… ご存知でいらっしゃる?」 顔を見上げて、驚いたのは 眉を寄せて、とても申し訳なさそうに尋ねる新明さんの姿。 「ミカミグループ、お聞きになった事はあるかしら」 「……はい」 ミカミグループといえば 戦後、鉄鋼と医療を二枚看板に急成長を遂げ 今やあらゆる分野で日本を支配する、最早財閥 最近ではIT関連の事業の発展は目まぐるしく しかも、医療と融合させた、機器の開発で つい先日も何か大きな業績を残していた。 「三神は、そのミカミグループの現社長の長男よ」 「……」 「ご存知なかったわよね、三神の性分でね どうも、女性とは軽く付き合う風潮があって…… わたくしが、もう少ししっかりしていればよかったんだけど……」 「何が仰りたいんでしょうか」 あたしは、切り出していた。 この人は何処までが、本当のこの人なんだろうか。 「あぁ、ごめんなさいね、そうね、ハッキリと言うわ 三神と別れて下さらない? 一学生との、遊びで、彼の今の教授人生に傷をつける訳にはいかないのよ」 新明さんは、目を伏せながら静かにそう、言った。
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