29

2/37
前へ
/37ページ
次へ
エレベーターが到着を告げるまでの数十秒。 あたしはそこで はしたないほどの濡れた声をあげた。 Tシャツの中に直接割り込んだ掌が 直に柔らかな部分を鷲掴み、また、例の人差し指が 穂先だけを擽る そんなパフォーマンスに 堪らなく飢えた雄の部分を感じ 身体の中の雌が戦慄(ワナナ)いた。 後ろでやけに大きな音を立てて扉が閉まったように思う。 ぼぅ、っと足元に浮かんだオレンジが 部屋の中の闇をより、強調させて あたしをそこへ誘う。 だけど あたしが目の前にしたのは 今、閉まったばかりの、黒い、扉。 持っていたバッグはゴトリと地面に転がり その手は後ろから掴まれ三神センセーの掌ごと 扉に押し付けられる。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1638人が本棚に入れています
本棚に追加