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爆走を始めた心臓に 怖いもの見たさも加わり 息をするのも忘れて 振り返って見上げたその、カオ。 やっぱり後悔する。 美辞麗句を並べても 到底追い付かない。 今までに一度も見た事のない際疾(キワド)さを その黄金比いっぱいにまで携え、あたしを見下ろす 三神センセー。 直黒の瞳は艶に揺れ 今し方、ケダモノを模した言葉を吐き出した唇には ひと噛みで、全身を麻痺させる有毒物を仕込んだ牙が 見え隠れする。 下から煽るオレンジの灯りがうっすらと伸び上がった影を 天井にあぶり出し それは微かにユラユラと 漂った。 そして彼はあたしの目を真っ直ぐ捉えた。 「オレは、…………華を永く、深く愛したいんだ」 心臓が、……止まるかとオモッタ……。
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