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吉田君に聞けば? ごくごく、と喉を鳴らして瓶を縦にするその姿は 正に、魔性、そのもので いつから、こんな女になったんだ、こいつは オレは心底、悲しくなった 「あ、でも、知ってる事、教えてあげてもイーワヨ? 今からとりあえず、スル?」 こいつには理性も、その欠片さえもないのか…… 「佳奈子、もっと楽しく生きればいいだろう どうして自分を貶(オトシ)めるんだ」 「は?」 「美香が居なくなってから、お前は絶えず美香の影に縛られている オレに会うと必ず美香の想いだと、怨みを吐く お前の想いは、そこには無いのか、佳奈子」 オレの言葉に 腹を立てたんだろう 持っていた瓶がゴトリと手から滑り落ち 中身が絨毯に染み込まれていく 「……何が わかんのよ、カナデ、あんたに何が分かるのよっ」 「……寂しいだろう、佳奈子」 「うるさい」 佳奈子に向かい、歩み寄ろうとして それは本人に遮られる 「出ていって」 「かな」 「早く、出てって」 ギラギラと湯だるように 掌を震えさせ 「あたしの心配なんかしてる暇、ないんじゃない?」 怒りを満たした顔で 歪んだ笑いをあげる 「出てって」 その、言葉を聞いて オレはクルリと向きを変え、扉を開けて部屋から出た 残った佳奈子が心配な気持ちはあった だけど、その佳奈子が 笑いながら呟く 「華ちゃん、どーなっちゃったかなぁ、カナデ? カナデのパパと……」 愉しそうに笑うその姿を、オレは知るはずも無かった
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