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佳奈子があんな風になってしまった事が 多かれ少なかれショックで そして今日まで突っ張った糸がプチンと 音を立てて切れたようで 車の中で 襲ってくる倦怠感に勝てずにいた そんな事は構いもせず鳴り出した着信音 「奏くん、終わった?」 能天気な親父の声にうんざりしながら 「こっちも滞りなく終わったよ、新明、ちょっと 可哀想だったかな」 「そ」 「で、まあ色々やるにも手順があるでしょ、奏くん 近々、じいさんに会いに行って」 そうか、ジジイがまだ、健在だったか 「暫く顔見せてないだろ? 絞られんぞ、奏」 ククク、と楽しそうに喉を鳴らす受話器の向こうに 睨みを飛ばす 「わかった」 「新明がな、奏に謝っておいてくれだと」 「は?」 「不甲斐ない娘達ばかりですまない、と」 「そ」 「なんだ、呆気ないね、奏くん、色男は大変だね」 「うるさいよ」 「じゃ、早速進めるように準備はできたから 日程なんかも決まったら連絡するよ」 「ああ、わかった」 「じゃあ、奏、健闘を祈る」 親父には祈られたくない 切れた通話に溜め息を落とし オレはシートに埋まった 電話さえ分からず 住所さえ知らず 華の実家に直接乗り込むのもどうかと躊躇して せめてもの救いは もうじき、後期日程が始まる事か
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