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「あー、海治!」 この3月に大学を卒業して 法科大学院に駒を進めた海治。 「華、進級おめでとう」 「進級って、誰でも上がれるし 今日は、どうしたの?」 「あー、予備試験のね、卒業証明取りに」 「予備試験組なんだ!」 法曹界への進出には 法科大学院に2年通ってから司法試験を受ける方法と 予備試験という小難しい試験をパスして司法試験を受ける方法があり 海治はその後者を選んだらしい。 ふーん。 なるほどね。 大学、という括りを抜けただけなのに どうしてか、大人、な雰囲気に見えて あたしは曖昧に笑った。 また、桜の季節。 アレから、あたしの身の回りは波風ひとつ立たなくて 物凄く、穏やか。 海治は相変わらずあたしをこよなく気にかけてくれて ……最近では、ほんとに、なんか 「保護者みたい、海治さん」 隣にいた雄子がそう呟いた。 「だよね」 ヨシヨシ、と意味もなくあたしの頭を撫でる姿を 小さい子に対して何気無くするソレとおんなじだ、と言う。 「あー、かもね、オレ、華を嫁に出せるか心配」 フワリ、と笑いながら海治が続けた。
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