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「華」 「はい」 「オレの残した遺伝子が、芽吹いた時は必ず連絡して」 オレがそう言うと、彼女の瞳が大きく開く 「センセ、それは、ナイです」 直ぐに元に戻り華に定着した、微笑みが振り撒かれた 「……本当に?」 「はい」 「絶対に?」 「はい」 はぁ、と出るのはため息ばかり 「そうか」 「だって、あたし、これから司法試験うけるんですよ? 早くて来年の今頃?」 「……そうだったな、そうか」 「だから、あたしも頑張ります」 オレの人生をかけたゲームは、早くも、負け、か…… 「じゃぁ、センセ」 「ああ」 別れは呆気ないモノで 夕べから今さっきまで、あんなに愛し合ったのに その、微塵もないくらいに ドライだった 不思議なモノで 手につかないだろうと思っていた数学は 海を渡ってから、驚くほどスンナリと頭に染み入り だけど、彼女を想わない日は1日たりともなくて それがまた、心地よかった 華は、オレにとって特別な女だった たまに届くバーグ先生からのメールで 華の近況を聞く 益々の発展を遂げると共に 彼女の美しさはそれ以上に開花していると、まったく余計な事まで知らせてくれる 華からの連絡は、予想通り、一切無かった だけど 彼女が元気でいて、幸せならそれでいい それが一番、いい
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