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こうして、ずっと待ち望んだ事が叶うって どうなんだろう。 いや、いや、待って。 何か、トラップがあったりするんじゃないだろうか……。 あは、すっかり疑い深くなっちゃった。 タクシーの中でも しっかりと繋がれた手と手 ちゃんと、感じる あたしの体温を奪う、彼の掌を。 そして あたしの中心に沸き立つ、そこだけ高い温度を。 後先を考えずにこのまま そう考えたのは、どうしてだろう。 何度も何度も彼に触れる機会はあった。 だけど、ずっとそうならなかったのは その時じゃなかったからだと、勝手に理解する事にする。 じゃあ、今がその時なのか? きっと、そうだと、理解する。 奏さんの宿泊するホテルは ‘ミカ’と、して初めて彼に出会ったところだった ここで聖さんと、どうこうなっちゃうんだ、と そう思っていた。 懐かしく思い返す。 聖さんも、今じゃ口うるさいもう一人のおとうさんのようで。 パタン、と静かにドアが閉まる。 大きな鏡と、トイレと、そこから続くバスタブと、シャワーブース 仄かな灯りの中で 彼は繋いだ手をやっと離す 「脱ぐの、手伝おうか?」
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