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身体が疼くとは、この事だ 「いえ」 迷いや躊躇いは一切無かった。 シフォンの膝上丈のワンピースは 空気を含みながらフワリと床に着地する キャミソールは肌に添って、滑るように落ちていった。 奏さんの視線は熱情が含まれていて それだけで、あたしの理知を焼き焦がす。 こんな、あられもない格好を見られて 慶ぶなんて、やっぱりどうかしてる。 あたしの身体は、とうにサカっていた。 お互いの思慮を纏める時間がずいぶん長いのは 思いの丈が有りすぎて、整理がつかないからだろうか。 だけど 覚悟を決めた筈のあたしの足は動かない。 どうしてだ、と考えて彼を見上げたまま また、暫く 短く息を吐き、体重をかけていた鏡の前から下りて 二歩、長い足をあたしのすぐ前に運んできた奏さん。 「華、やっぱり見るだけじゃ、済みそうにないけど」 そう言われて、急に恥ずかしくなって だけど、動揺しないように、ゆっくりと俯いた。 「……で、下さい」 「なに?」 あたしの、掠れた声を聞き返す彼に 「済まさないでください」 お腹に力を入れて ハッキリと、声に出し顔を上げた。 触って 見て 味わって 懇願を大いに瞳に込めて だけど、ココまで来て、待った、がカカル。 「あ……、悪ィ、持ち合わせてねー」 直ぐに分かった。 あぁ、そうか。 きっと、そうだ。 だけど、それを用意する事で、覚めるような熱では無かったけれど、水をさしたくなかった。 「ご心配には及びません、明後日くらいから、始まります」 キッパリと言い切った。 それでも、彼は反撃の狼煙を上げない。 だから、あたしは誘うんだ。 堪らないと あなたが欲しくて ホシクテ、タマラナイ。
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