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死ぬほど恥ずかしい そんな風に思ったのっていつぶりだろうか。 だけどそんな事も マーメイドと写真を撮る彼を見た時には 微塵も残っていなかった。 ただ、楽しくて、幸せで そして、何もかもが愛しくて。 度々交わすキスは その都度あたしをドキドキと刻ませる。 繋いだ手も 触れる肩も 揺れる唇も 全部ぜーんぶ、ひっくるめて 愛したい。 テーマパークのホテルの向こうに、間もなく沈む夕陽は あたしの表現では足りないくらいの、アカイイロ。 自然界の色や、彩りは模倣が難しい。 あたしは奏さんの研究室の本棚を思い出した。 彼の書物は綺麗に並べられた 自然界の模倣。 きっと、この人と一緒にいると あたしは心浮かれてばかりいる。 やっぱり思うところは、そうしたいし、そうなりたい。 だけど、今のままじゃダメなんだ。 だけど、何かしら繋がりがほしいのも本音。 昔の話みたいだけど、借金もあるし……。 その事について、奏さんは何も言わない。 奏さんにも、沢山の使命があるように あたしにも、乗り越えなきゃいけない使命がある。 だから、だからね。 奏さん。
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