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華、と呼ばれて
振り返ると、優しい黄金比が
夕陽の微かで、それでいて強い朱に輝いていた。
少し、寂しくて
胸の奥も、鼻の奥も、縮まって痛い。
「オレは後5年は帰ってこない」
聖さんが永住かも、って言ってたもん。
「5年したら、立派な弁護士になれる?」
「さぁ、どうでしょうか
ひょっとしたら、いつまでも経っても司法試験浪人かも」
胸が苦しい、そんな心持ち。
笑って答えるのも、時として酷なもんだ。
奏さんの麗しい面に
ニヒルな笑いが張り付いた。
「華、ゲーム、しようか」
「は?」
「オレと、人生かけた、ゲーム」
人生を?
かけるの?
手首を奪われて、掌に絡む掌。
キュ、と握られたので、ギュウと握り返した。
「帰ろう」
「あ、の、ゲームって?」
「もう、始まってるけど?
とにかく、それよりも……」
取られた手を引かれ
トン、と突き当たった先は彼の胸元
耳に寄るその熱い唇からささめかれた言葉が
あたしのナカを支配する。
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