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奏さんとの別れは 最上級に苦しくて だけど 未練なく、見せられたと思う。 彼には着いていく事はできないし これから凄まじい研究や、論文を発表するであろう天才の邪魔も出来ない。 楽しかったなぁ、2日間。 そればっかりを思いながら あたしは家に帰りついた。 不思議と涙は出なくて その理由は分かっていた。 三神 奏の情報を山ほど、溢れるほど、集めたからだ。 いや、ホントに溢れたし…… 最早、笑いしかでない。 アハハハハ。 「随分ご機嫌ね、華ちゃん」 「うん、そうかな」 「楽しかったの?お泊まり会」 お母さんはなかなかの曲者で 嘘をついても多分すぐバレちゃうから 本当の事を伝えていた。 「うん、楽しかった。 幸せだったよ」 「そう」 それが、一番よねぇ、なんて言いながら あたしを手招きして シンクを指差す。 「あ、洗うのね?」 「うん、今日は肉じゃが」 泥んこのジャガイモが山のように積み上がっていて 「多いね……」 「よろしく」 お母さんはにこやかに笑った。 こんな風にして 穏やかな日常を送るなんて考えてもみなかったなぁ。 志伸さんの心配も 奏さんの心配も 何もしなくて、よくって。 あ、勝手に心配してたのはあたしだけど。 ‘オレの残した遺伝子が、芽吹いた時は必ず連絡して’ 奏さんの言葉を思い出して また、笑う。 今度は病院、連れて行かれなかったなぁ、なんて 呑気な事を考えていて。
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