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「もー!信じられません」 「……すいませんでした」 ランチを摂りながら一応は謝ってみて 「……だけどね咲良くん、君も楽しんでたでしょう 私だけが、悪いとは思」 「三神センセー、ド・変態」 オレのセリフを遮った罰は 今晩きっちり受けてもらおう そう考えると、勝手に唇がカーブする 寝ている間に華に忍び込んだ事をド・変態扱いされ 睨まれている 可愛いもんだ 「大学院、休んじゃったな」 「大丈夫です」 と、言いながらも ちょっと白い目で見返してくる いや、もうオレが気付いた時には昼だったからね? 「奏さんはいつ帰るんですか」 「あー、帰んない……」 「は?」 華のあまりの驚きようが フォークに指し損ねた人参に伝わり コロリ、と皿から飛び出した 「いつ?」 「明日」 オレはその人参を摘まみ、口の中にポイっと放り投げた 「また、急ですね」 顔色ひとつ変えずに言う華に 「もともと決まってたから、急でもないよ」 ちょっと微笑みを返しながら、直ぐにコーヒーに 目を落とした ……そうなんだ あんな、勢いのまま、メチャクチャに抱いて 明日、オレはとんずらする ……おい、責任者取ろうぜ、40歳…… 「華は何を目指してるの?」 本当は、このまま拐っていきたい 「あたしは、弁護士になります」 彼女の揺るぎナイ決意は 真っ直ぐにオレを見つめる眼差しと ピン、と伸ばされた背筋と そして、穏やかな口調と 何もかもが、物語っている 華は、いつの間にか 人間として足りなかった、何か、を 自分で見つけたのか
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