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「オレはいっこうに構わないけど」 立ち上がり繋いだ手を引き レストランを後にして そのまま向かった先は 東京のエンターテイメントパーク ガキの頃に来たっきりで まさか、こんなオッサンになってからくるなんて 思わなかったが…… 「案外混んでるな」 「ここはいつ来てもこんなもんですよ」 夕方パスポートとやらで入園して その後は タワーのエレベーターから落下して 地中のマグマの横を通り抜け 壊れそうなコースターで一回転し 挙げ句のあてには、亀?とトークして 気付いた時にはオレはマーメイドと並んで写真に収まっていた 「アハハハハハハハハっ」 「うるさい」 「や、ま、真面目にうけ、ウケるっ」 今日、もう最後の夕焼けが彩る空に 大きく、大きく笑う彼女を見て 心底、楽しいと思った 「華」 「……はい?」 目尻を指で拭いながら 彼女はオレを振り返る 「オレは後5年は帰ってこない」 薄暗く、朱く燃えるバックが彼女の身体を同じ色に染める オレは夕べ、アカク染まった華を思い出していた 「5年したら、立派な弁護士になれる?」 「さぁ、どうでしょうか ひょっとしたら、いつまでも経っても司法試験浪人かも」 フッと笑ったのは そんなこと、有り得ない、そう思ったから 「華、ゲーム、しようか」 「は?」 「オレと、人生かけた、ゲーム」 不思議そうに見つめる彼女の手を取り歩き出した 「帰ろう」 「あ、の、ゲームって?」 「もう、始まってるけど? とにかく、それよりも……」
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