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華の耳許に、唇を掠めて 直接響かせたセリフは 彼女の身体を縛り上げる言霊となる 黒い野望と 白い希望を 出来るだけたくさん、彼女に残したい 「なぁ」 「はい」 「このマーメイドって、1日に何回変わるんだろうな」 「は?」 電車に揺られながらさっき撮ったショットを眺めて 「一日中、あそこに座ってられる訳ないでしょ お腹だって空くだろうし、トイレ」 「行かないし、空かない!」 「は?」 「だって、あそこは夢の国ですからっ!」 若干、キレ気味にピシリと突き刺さったセリフに ああ、そうだった、と舌を出した 大人になっても 絶大な人気を誇るテーマパークだった 華とのデートは あからさまに楽しくて、彼女の総てをお持ち帰りしたくなる ずっと手離したくないのは変わらない だけど 彼女にも、オレにもまだやるべき事が残っていて 互いに自由が効かないんだ 「可愛すぎて、縛り付けたい」 「は?」 「いい?」 「何がですか?」 華の細い手首をキュウと握って囁く 「緊縛」 華が持ち上がる手首と オレを交互に、何度か往復した オレは自分の掌に包んだ華の感触を味わう その視線がオレにピタリと止まって そこに、ゆっくりとオレも向き直り 彼女の唇の動きを目で追った
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