終 #2

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「華、どうした」 「うっ」 本当に、ドラマや、テレビで見るような あのシーンを彷彿とさせる。 トイレで便器に頭を突っ込み 胃の中のモノを吐き出した。 前に、聖さんと出席したパーティーで 彼らの親子関係が分かって同じようになったなぁ、なんて 考える余裕があったりして…… 「はぁ……」 トイレットペーパーで口許を拭う 「華、お前」 「うん」 後ろからかかった声に頷いた。 「身籠った」 ポツリと呟いて、暫くしゃがみこんでいるあたしの 脇を抱えて、ゆっくりと立ち上がらせた志伸さん。 「そうか、めでたいな」 そう言った彼を振り返って 寂しそうに笑った彼に、ありがと、と 唇だけで応えた。 心も身体も志伸さんのモノにはならない、と 断言した事を 更に現実的に見せしめたのだ。 どんなに辛い想いをさせただろうか。 傍にいてくれ、と頼まれた時には もう、その可能性があったにも関わらず あたしはそれを承諾して なんて、酷い女なんだ。 「一人で産む気?」 「うん」 「親父達には?」 「伝えなきゃね」 「歩ける?」 「うん、でも、気持ち、わるっ」 あたしは また、便器に埋もれた。 ちゃんと、掃除してて、良かった…… こんな時なのに、こういう風に考えられるあたしって 強い、そう思った。
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