終 #2

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奏さんと奇跡的な再会をしたあの日 あたしは彼に仕掛けた。 あたしを抱く事を一瞬戸惑った彼に ‘明後日くらいから始まる’ と、確かに告げた。 その言葉通り、毎月定時に必ず放り出される あたしの一つの遺伝情報が痛みを伴って排出された。 騙したんだ。 でも、生理が始まるとは、言ってない。 だから、騙したうちには入らないかな。 「華」 ポン、と置かれた掌が、あたしの髪をスルリと撫でていく。 「みんなで見守るってのは、どう?」 「……」 「一人でなんて、オレ達が産ませると思う?」 「志伸さん」 「それに、かあさんなら絶対、漏れなく絡んでくると思うし」 「あ」 そりゃ、そうだった。 「華の子供、オレも抱いてみたいし 親父だって喜ぶよ」 「志伸さん……」 「まあ、実際複雑な気持ちだけど…… こればっかりは、仕方ない」 優しく、髪を撫でながら あたしに微笑んだ彼は、ちょっとかっこよくて 「華、病院行こうな」 そう言って、あたしに触れるだけのキスをした。 このキスは もう、後々には何も続いていかない 祝福のキス。 気付いたら、涙を拭われていて だけど、こんな感動的な場面でも 「ヴ」 こみ上げてくるのは 嬉しさと愛しさだけではないのが ちょっと、残念。
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